2021年に就航した、横須賀と新門司を結ぶ東京九州フェリー。
乗船時間は約21時間。プライベート感が高まった新造船でプチクルーズを体験できます。
そんな訳で今回は、横須賀から新門司まで東京九州フェリー「それいゆ」の乗船記です。
横須賀港と新門司港を結ぶ今回のルート(引用:東京九州フェリーHP)。仕事終わりからでも乗船可能な23時台の深夜出発。フェリーによるトラック等の海上輸送だけでなく、移動時間を楽しむ客層の取り込みを意識しているとか。
乗船DATA
船舶会社:東京九州フェリー
乗船日:2022/06
路線:横須賀⇒新門司
乗船時間:21時間15分 (発23:45⇒着21:00)
船舶名:それいゆ
部屋:ツーリストS / 4130号室
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目次
仕事終わりに乗れるフェリー
横須賀港の出発時間は23:45。
今回は平日の仕事終わりに乗船しました。
関東圏以外の地方からでも十分間に合います。
横須賀フェリーターミナル
乗船1時間前に横須賀中央駅から約1kmの距離にある横須賀フェリーターミナルに到着。車だと約5分、徒歩だと約15分。近くて便利です。
今回乗船する「それいゆ」と同型のはまゆうの模型がお出迎え。船首は最近流行りの垂直タイプ。バルバス・バウも未装備の設計です。
フェリーターミナル内部。2021年の就航開始に合わせて開業。新しくて綺麗ですが、施設は控えめ。必要最低限といったところ。
売店や軽食コーナーも完備。売店では横須賀にちなんだ横須賀海軍カレーが販売されてました。軽食コーナーでも横須賀海軍カレーをいただけるみたいです(1200円)。
新しく綺麗な新造船
今回のシップ「それいゆ」。2020年就役。名前の由来は北九州市の花のヒマワリ。ソレイユはフランス語で太陽・ヒマワリの意味。総トン数15,515トン、旅客定員268名の大型船。太平洋フェリーや新日本海フェリーと同等クラス。
自動運転の実証試験にも使用され、2022年には約240kmを試験的に航海したとか。
全長が222.5mの船体。200mを超えると分類上「巨大船」の分類になるため、航行上の制約が生じます。そのため、日本のフェリーでは一般的に200m以下の船体が多め(参考:太平洋フェリーのいしかりは全長199.9m)。
いざぁ乗船。浮輪がお出迎え。今回の乗客数は少なめ。今回の航海で密になる場面は皆無でした。
フェリー内でイチオシのエントランス。小さなステージとテレビ、周辺にはベンチ。3デッキ構造で車椅子でも安心なエレベーター付き。木目調の船内は明るく綺麗。
ツーリストSの部屋
今回の客室(引用:東京九州フェリーHP)。今回は個室のツーリストS(4130号室)を予約。運賃は18,000円。プライベート感を重視した船体設計のため、全体的に個室が多めです。
東京九州フェリーの個室は高めです。ルームチャージ制のため、基本運賃に部屋ごとの追加料金が発生するスタイル。そのため、上級クラスの部屋を1人で利用しようとすると運賃がかなり高額になります。
ツーリストSの区画。部屋の中にさらに個室って感じ。ここは6部屋ゾーン。
今回のお部屋。ベッド・テーブル・テレビの簡易的な個室。ツーリストSに窓はありません。若干閉鎖的ですが、プライベート感が確保されてるだけでも十分なので贅沢は言えません。宿泊&移動して1.8万ならお手頃ですね。
ドアと床との間には若干の隙間があるため、完全な個室とは言えません。他の部屋や廊下の歩行音がわずかに聞こえてきます。ドア付き寝台といった表現の方が正しいかもしれませんが、従来のような雑魚寝スタイルから大きく改善しました。全然アリです。
絶妙な幅のベッド。可もなく不可もなし。寝るだけなら十分な広さ。サンライズ出雲・瀬戸のシングルベッドと同等の広さといったところ。
柔らかさは★★☆☆☆
読書灯とコンセント。USB用のソケットも完備。テレビから音が出せないため、イヤホンやヘッドホンが必要になります(フロントで借用可)。
もちろん、部屋は施錠可能。鍵はQRコード形式(画像は一部編集済)。スマホに取り込んだQRコード式の鍵で解錠出来ました。ちょっと読取感度は悪め。わざわざ鍵やカードを持たなくていいので大変楽。
乗船の際もスマホで手続きが完了していれば直接搭乗橋に向かってOK。カウンターでの手続きは必要ありませんでした。
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21時間の船旅の始まり
時間に縛られない、約21時間の船旅がスタート。
到着は翌日の21時。本当に船旅が好きな人向けの時間設定です。
横須賀港出港
定刻より10分早い23:35に出港。岸壁では作業員の方がお見送り。こんな夜遅くにありがとうございました。
横須賀港を出港。徐々に遠ざかる街並み。次、陸地を踏めるのは約21時間後...
今回の船旅情報。レストランの営業時間は約1時間ごと。特筆すべき点としては、シャワールームがいつでも利用可能なことでしょうか。大浴場の営業時間外でも利用できます。
深夜1時まで営業するレストラン
デッキで出港の様子を楽しんだ後は夜食の時間。なんと、深夜1時まで営業。乗船後に温かい食事が取れるのは大変助かりますね。仕事が忙しすぎて夕食も取れずにギリギリ乗船、なんて人にはぴったり。
カウンター席が多めの"おひとり様"向けのレストラン内の設計。助かりますね。
注文は各席のタブレットから可能。誰とも言葉を交わすことなく注文が出来てしまいます。昔のような、ビュッフェスタイルのレストランは昭和・平成までですね。夜食にぴったりなおつまみ系メニューも豊富。
ちなみに、会計も各自が精算機で実施するスタイル。人との接触を最低限にすることができ、近年のコロナ禍には最適かもしれません。
東京九州フェリーオリジナルカレー(700円)。味はまろやか系。脂身系の旨み。程よいスパイシー感があり美味しかったです。早い提供スピードや店員さんの丁寧なサービスなど、深夜の疲れを感じさせない素晴らしい接客でした。
お土産も売ってる便利な売店
売店も深夜1:00まで営業。一般的なお菓子・ドリンク・アルコール類や日用品の他に、横須賀や九州のお土産も販売してました。フェリーのグッズもあり。コンパクトですが、品揃えは良いです。
売店購入品。大浴場用にオリジナルタオル(300円)を購入。博多名物のめんべいも購入してみました。小袋で販売されていたため、おつまみにぴったり。ツーリストSは部屋に冷蔵庫がないため、アイスや飲料の保管が不便...
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意外と暇にならない船の旅
2日目がスタート。心地よい振動と揺れのおかげで熟眠できました。
各種の娯楽のおかげで、あっという間の航海でした。
海を眺めながらの朝食
朝8:00。海を眺めながらの朝食。これぞ、船旅の醍醐味。陸上よりもおいしさ10倍です。
和食プレートセット(950円)。盛り付け方が大変綺麗。焼き鮭の程良い塩味と旨み、明太子の目が覚める辛み。出汁の効いた味噌汁とほかほかご飯。東京九州フェリーは食に関して力が入ってますね。
各所の展望スペース
船首のフォワードサロン。新日本海フェリーと同様に、東京九州フェリーの最前部は展望室となってます。静かな空間で読書にぴったり。
前方に向かって並んだ椅子。景色を眺めながらボーっとするのにぴったりな場所。
船内窓側の随所に椅子が設置されているため、誰でも気軽に腰を据えて景色を楽しめます。
各種イベントや娯楽の場
フェリーの旅の楽しみの1つ、船上の娯楽。東京九州フェリーでは、映画の放映だけでなくプラネタリウムを楽しむことができます。正直、フェリーでの映画はB級作品が多かったのですが、ここではゴーストバスターとE.T.といった超名作が放映されていました。暇つぶしにぴったりです。
シアター内部。中央にはプラネタリウム用の装置。周囲にはヨギボー(Yogibo)。ヨギボーの座り・寝心地がとても気持ち良く、プラネタリウムの星や海、花火などの癒しの映像・音声と相まって、眠りに落ちそうになった約40分間でした。何なら、寝てる人も居ました。
ちなみに、このプラネタリウムは有限会社大平技研の「MEGASTAR CLASS」。定期運航するフェリーに設置された事例は世界では無いとか。JR東日本のSL銀河や、スターフライヤーの機内でのイベントにも同様の装置が使用されています。
天井に映し出された数々の星が、地元の田舎の空を思い出させてくれました。
カラオケルームは1室のみ。1時間1000円で利用可能。カラオケ機種はDAM-G100XII。今回は利用せず。
スポーツルーム。ランニングマシン2台とコードレスバイク3台。意外と利用客は多めでした。まるで陸上クオリティ。
航海中いちばんお世話になった大浴場(引用:東京九州フェリーHP)。今回の航海中は計3回利用。頭のタオルが飛ぶレベルで吹き付ける海風が気持ち良く、こんな素晴らしい体験が出来る東京九州フェリーは最高ですね。なお、揺れを考慮してか、露天風呂はやや浅めの設計。屋内の湯船の深さは普通でした。
洗い場は計9箇所。シャンプー・リンス・ボディソープの3種類が常備されており、タオルだけ持参すればOK。各ブースの壁も高く、プライベート感高め。シャワーの水圧も高く、地上の入浴施設よりも水量が豊富でした。船の上とは思えないレベルの水の充実さ、素晴らしいです。
意外と繋がる電波
意外と携帯の電波は繋がりました。ウマ娘が普通にプレイ出来るレベル。マチタン可愛い。伊豆半島沖などの一部の場所では繋がりにくいこともありましたが。船体の内側は電波が届きにくく、窓側やデッキなどの屋外では電波強度が強くなりました。
船内無料Wi-Fiも回数制限付きで利用可能。なお、こちらは陸上の電波を拾ったサービスなので、陸上から遠い場所では接続が不安定・不可になります。船内Wi-Fiコンテンツには無料のマンガも収録されており約150巻分の作品が。暇になることはないかと。
行き交う船の多さ
姉妹船の"はまゆう"横須賀行きとのすれ違い。意外と距離が近く、迫力あり。この時ばかりはデッキに多数の乗客が訪れていました。
航海中、非常に多くの船舶を目撃する機会がありました。海上保安庁の測量船「HL12 光洋」と並走。
海上自衛隊のすがしま型掃海艇の「MSC-686 うくしま」とすれ違い。ロービジ化された艦首番号と灰色の船体は本当に視認しにくいですね。艦艇の色が灰色に統一されている理由も納得。
今回のこれが通常の任務かわかりませんが、最近は掃海艇まで警戒に駆り出されているなんて話も。それだけ緊迫しているのでしょうか。
少ない揺れ
時速51.4km(約27.8ノット)の速力。ほぼ最大速力での航海。大型フェリーの中では速い方です。気になる揺れですが、今回は気になるレベルの揺れはありませんでした。ローリング系の揺れがたまにある程度。外洋での揺れは若干大きくなりましたが。エンジンからのマイルドな振動は常時あり、安いマッサージチェアのバイブレーションのような感じ。季節によって揺れの大きさは変化するものと思われます。
就航地名物の昼食
就航地の名物グルメのメニュー。ここでも横須賀海軍カレーが食べれます。
三崎港まぐろ&湘南釜揚げシラス丼(1200円)と湘南シラスのシカゴ風ピザ(700円)とドリンクバー(300円)の昼食。量は若干控えめなものの、味は陸上クオリティ。ブツ切りマグロは筋がなく柔らかく、生臭さもなし。シラスは程よい塩加減。大小のサイズ感の異なるネギの風味が海鮮物と相性ぴったり。初体験のシカゴ風ピザですが、こちらは外観が美しいです。生地のパリパリ感とシラスのふわふわ感が干渉材的な役割を果たしていました。豊富なシラスとチーズの存在感ある奥深い味わいが相まっており美味しい!アツアツの鉄板で提供されるため冷めにくく、インスタ映えしそうなお洒落な見た目に。
どちらも陸上クオリティ。良い意味で、船上に居る感覚をこの時ばかりは忘れてしまいました。
フェリーの食事といえばビュッフェ形式がどこも一般的ですが、ここは違います。1品1品のクオリティが高いです。なるほど、船旅を楽しむ層の求めている物をピンポイントで狙ってきましたね。素晴らしいです。
ちなみに、船上バーベキューも可能。事前応募制でしたが乗客が少ないこともあり、希望者全員が満喫できていたようでした。バーベキューセット1人前で1200円。意外とお手頃です。
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夕陽が美しい航海の終盤戦
航海はいよいよ終盤戦。
四国と九州の間の海域の豊後水道へ。夕陽が大変綺麗でした。
四国と九州の間を通過
左手には四国最西端の佐多岬、右手には大分県の高島がうっすらと。まさに、ここが四国と九州の間。展望デッキはこことバーベキュー会場のフロアの2箇所しかなく、意外と移動出来る範囲は狭いです。
ここでも多数の船舶とすれ違いや並走。港で"寝ている姿"しか見たことのない船舶も、ここではイキイキと泳ぐ姿を目撃し放題。特に、大型のタンカーが航行する姿は圧巻でした。
夕食もご当地名物で
今回の航海最後の食事となった夕食。今回は佐世保名物の国産牛佐世保レモンステーキセット(1700円)とポテト(350円)と生ビール(570円)を注文。レモンの風味が爽やかでGood。ソースはしっかり目の味付けでご飯が進みました。ポテトは量の多さだけでなく、太さもしっかり系。生ビールはキリンビール。1日の〆としては最高の組合せ。
初体験の佐世保レモンステーキ。焼き加減はしっかり系。全体的に量は控えめですが、体を動かすことのない船上ではちょうど良かったです。外観も素敵。
みんなで眺める日没
日没の時間が近づくと、デッキには乗客の姿が増えてきました。船上から眺める夕陽の美しさに感動。
船首のフォワードサロンから。夕陽に向かって進む船体。今日も1日お疲れ様でした。
夜の新門司港へ
新門司フェリーターミナルに接岸。こちらもフェリーターミナルとしてはコンパクトかつ必要最低限な設計。
小倉駅行きの無料連絡バスが待機中。下船してすぐ、乗車出来るのは助かります。ここ、場所が場所だけにアクセスが大変なので。
21:00、定刻にて新門司港に到着。21時間15分の船旅を共にした、綺麗で快適な素晴らしい"それいゆ"に別れを告げます。
無料連絡バス
小倉駅行き(門司駅経由)の無料連絡バス。約40分の乗車。フェリーターミナルが市街地から離れているだけに、このサービスは本当に助かりました。逆に、この連絡バスを逃すと大変なことに...
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まとめ
そんな訳で、東京九州フェリー「それいゆ」ツーリストSの部屋で横須賀から新門司まで航海しました。
個室で約21時間の航海を満喫でき、18,000円の運賃ならお手頃なのでは。
船内はプライベート感を重視した設計・システムとなっており、個室の客室やタブレット注文式のレストランなど、昔のように人と接する機会がほぼありませんでした。
食事はご当地メニューを採用するなど、従来のビュッフェスタイルが一般的な船食から大きく進歩しています。そして美味しい!
大浴場・露天風呂も素晴らしく、海風を感じながらの入浴は是非とも体験していただきたいところ。
ヨギボー常設のプラネタリウムも体の疲れが取れました。
従来の船旅のイメージを良い意味でアップデートさせられる、素晴らしいクルーズでした!
評価
船内食
★★★★★(ご当地グルメのメニュー。外観・味ともに素晴らしいクオリティ。量は若干控えめか)
客室
★★★☆☆(施錠可能な個室のツーリストS。テレビ・ベッド・テーブルのみ。寝るだけなら十分)
船体コンディション
★★★★★(船齢約1年。ぴかぴかな船体は清潔感MAX)
船内スタッフ
★★★★★(どの部門のスタッフも親切・丁寧・テキパキとしたサービスだった)
エンターテイメント
★★★★☆(大浴場・ジム・カラオケ・シアター・プラネタリウムなど娯楽多数。意外と暇になることはなかった)
時間の正確さ
★★★★★(定刻での出発&到着)
総評
★★★★☆
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