リアエンジン&銀のベアメタル塗装がカッコいいアメリカン航空のMD-83型機。
残念ながら、2019年9月4日に全機退役してしまいました。余生は訓練などで使用されています。
そんな訳で今回は、アメリカン航空のMD-83の搭乗記。ダラス・フォートワース国際空港からメンフィス国際空港まで、エンジン真横席でフライトしました。
予約画面。McDonnell Douglas Super MD-80の表記が素晴らしい。表記上はMD-80ですが、正式な機材名はMD-83です。
搭乗DATA
航空会社:アメリカン航空
搭乗日:2019/07
路線:ダラス・フォートワース⇒メンフィス
飛行時間:1時間26分 (発12:10⇒着13:36)
便名:AA2497
座席:29F 普通席・窓側
機材:MD-83 (N983TW) 機齢19年8ヵ月
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目次
ベアメタルのMD機が並ぶダラス国際空港
今回の出発地はテキサス州のダラス・フォートワース国際空港。
アメリカン航空の本拠地でもある本空港。アメリカン航空の機体だらけ。
そんな中にも、当時絶滅危惧種だったMDの姿がちらほら確認できました。
ダラス国際空港に駐機するMD-83。アメリカン航空は2019年まで本機種を運用しました。撮影当時、世界的にレアになりつつあったMD。デルタ航空などもMD-88・MD-90を保有していましたが、2020年に退役を迎えました。
MD-83はエンジンを高推力のJT8D-219に変更し、燃料タンクを増設することで航続距離を延長したタイプ。MD-82よりも航続距離が20%程度延びています。
今回の搭乗機のMD-83(N983TW)。機体年齢19年。地肌むき出しのベアメタル塗装がカッコいい。新塗装化が進む中、MDは全機旧塗装のまま退役を迎えました。
残念ながら、今回搭乗したN983TWは搭乗の1ヵ月後の2019年8月に引退。まさにギリギリの搭乗となりました。
うっすらと暗いレトロな機内と座席
憧れの機体にいざぁ搭乗。ここまで緊張した搭乗は久々。
まず出迎えてくれたのはベアメタルの機体表面。触り放題。
機内に踏み込む、蛍光灯のうっすらとした暗い機内がお出迎え。あぁ、これこそMDなんだなぁと実感しました。
いざぁ搭乗。銀の地肌むき出し(実際は透明なコーティングあり)のベアメタルに触り放題。若干くすんだ銀色がベテラン機材感満載でした。表面には細かい傷の数々が。
後部セクション。2-3の横5席の配置。暖色系の蛍光灯色がGood!!確かに、過去に搭乗したJAS・JALのMD-87もこんな色合いだったなあと懐かしい気分に。デルタのMDはLED照明化によって近代化改修済だったので、アメリカンのMDは"製造当時のまま"の雰囲気を体験できました。
機体最後部。さぁ問題、どれがトイレでしょう??正解は両サイドの2箇所。真正面は最後部の非常口でMD-80シリーズの特徴の1つです。設備が不十分な空港ではここから乗降することもできました。
正直なところ、トイレと間違えて非常口の扉を開ける人が居たと思うんですよね。このような独特な設計の機種が減るのは悲しいことです。
今回の座席29F。昔ながらの布製のふかふか座席。素晴らしい!!シートベルトは着席前から散らかっていましたが、アメリカのエアラインの多くはこんな感じでした。日本が綺麗過ぎるのでは??
横から。MD-80シリーズは窓と窓の間隔が他機種と比べて短い気がします。座席間隔は普通でした。
後方から。背もたれは厚め。個人モニターやオーディオシステムも未装備。まさにTHE・座席。
普通の足元広さ、過去最高ランクの柔らかさ
足元の広さは普通。前席とは指4本分の広さでした。
今回、衝撃的だったのが座席の柔らかさ。過去最高ランクの柔らかさでした。
ふかふか度MAX。着席すると、よーく沈み込みました。この機体以外でここまで柔らかい座席は経験したことはありませんでした。
一般的な足元広さ。広くもなく、狭くもなく。それよりも、柔らかさの方が衝撃的。とにかく座面が柔らかく、着席時の沈み込みがすごかったです。例えるなら、実家の布団レベルでしょうか。
指4本分の座席間隔。一般的な広さ。1時間弱のフライトでは苦痛に感じることはありませんでした。
座り心地レビュー
過去最高ランクの柔らかさ。座面は深く沈み込む。ホールド感ややあり。シート幅はまぁまぁ、足元広さは指4本分。ふかふかな布製。ここまで柔らかい座席は初めて。素晴らしい。
座席の柔らかさ
★★★★★ (過去最高ランク)
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終始興奮続きのMDらしさ満点のフライト
初期のMD-80のデザインが残された今回の機体。
近代化改修されたデルタのMDでも興奮しましたが、今回はそれを上回る体験ができました。
豪快なJT8D-219のエンジン音
MD-80シリーズの特徴のリアのエンジン。
耳元から聞こえる豪快なエンジン音が大変素晴らしかったです。
バイパス比は2以下。燃やす空気1に対して、バイパスする空気(燃やさない空気)が2の割合。つまり1:2。最新のA320neo用のPW1100G-JMエンジンのバイパス比は12なので、neoはほとんど燃焼させていないことがわかります。燃費が良い訳です。
この高燃費・高騒音の、環境保護の流れに背くJT8Dエンジン。このエンジンは本当に素晴らしいです。
隣にはTWAのレトロ塗装のB737-800。トランス・ワールド航空は2001年にアメリカン航空に吸収される形で消滅しました。この機窓だけ見ると、過去にタイムスリップしたかのようですね。
今回の搭乗機のN983TWは元トランス・ワールド航空の機体。よって、どうせレトロ塗装をするなら本機の方がピッタリだと思うのですが...まぁいいや。
豪快なエンジン音とともにダラスを離陸。高回転時のギュオォーン音。足先から伝わるエンジンの細かな振動。会話出来ないレベルではなかったですが、現代の主力機の中では一番の爆音でした。凄かったです。この爆音を求めて渡米したのだ!!
JT8Dのエンジン音は本当に素晴らしいです。GE90やPW4000・CF6・CFM56とは異なる全力疾走感。我武者羅感という言葉がお似合いのやかましいエンジン。日本で聴くことが出来るのはC-1輸送機ぐらいでしょう。
昔ながらのシートベルトサインなど
MD-80シリーズの初期デザインのままのサインや読書灯など。
黄色の読書灯のボタン、オレンジのCAさん呼び出しボタン。角ばったイラストのベルトサイン。
懐かしさを感じました。
レトロな読書灯などのボタンやベルトサイン。JAS・JALのMD-81・87でも同様のものを装備してました。子供の頃に松本=新千歳でMD-87に搭乗した際の記憶がよみがえってきました。
搭乗率8割の機内の様子。座席の背もたれ丈が短いため、頭部の半分ほどははみ出してしまいました。大柄な方が多いアメリカですが、窮屈ではないのでしょうか。
安全のしおりと機内誌の機材リスト
アメリカン航空のMD-83はしおり上ではS80の表記。
愛称のSuper 80が由来かと思われます。
S80の表記の安全のしおり。愛称を知らない人だと別機種かと勘違いしそうですね。
しおり内部。特に注目なのが最後部の非常口に関する記載。テールコーンが分離しているイラストの再現度が素晴らしいです。リアル。
こちらは機内誌のフリート紹介。MD-80の記載あり。ここでは新塗装ですが、実際は旧塗装の機体しか存在していません。幻の新塗装ですね。
水平飛行も素晴らしいエンジン音
水平飛行も良い音を奏でてました。
頭の真横にエンジン。オーケストラだと最前列席のようなもの。
一般人だと不人気な席ですが、マニア向けだと特等席なのです。
2019年のベスト機窓。スラーっとした主翼と後部のJT8Dエンジン。夏の青空。この1枚のために何万円もかけて渡米した甲斐がありました。
2019年の機窓まとめ↓↓
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自分の2019年フライト・機窓総まとめ
2019年も本ブログを訪問・応援していただき,誠にありがとうございました<(_ _)> 社畜化したので更新頻度低めな1年でし ...
エンジン内部の拡大。最前方の固定翼はInlet Guide Vane(IGV)。独特な設計ですね。
IGV:吸込空気に一定方向の流れをつくる静翼。
JT8Dのようなコンプレッサー入口にあるIGVは騒音源となるため、現在のエンジンにおいては廃止される傾向にあるそうです。
参考程度の騒音測定。スマホなので精度は低いですが...87dBは窓を開けた時の地下鉄の車内レベルらしいです。他機種では80台前半だったので、明らかにうるさいです。
水平飛行時は風切り音とエンジン音のハーフハーフといったところ。離陸時の爆音よりは静かですが、最新鋭機のよりは賑やかです。この音のうるささが素晴らしいんですけどね。
ガタガタのテーブルでコーラを飲む!!
テーブルが壊れてました。
ドリンクサービスでいただいたコーラも、ガタガタのテーブルの上では不安定。
傾いたテーブルとカップ一杯のコーラ。まさか、ベテラン機材の洗礼をこのタイミングで受けるとは...
コーラとプレッツェルの機内サービス。350mLの1缶、アメリカンサイズ。テーブルが故障により傾いていたため、常に手で支える必要がありました。(画像は頑張って撮りました...)
左に傾いたテーブル。まさか、ベテラン機材の洗礼を受けることになろうとは...逆にいい思い出になりました。
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降下の開始、MDとの別れ
1時間弱のフライトも終盤戦。お別れの時が迫ってきました。
降機前のコックピット見学など、最後の最後まで楽しませていただきました。
夏の積乱雲を避けて飛行。操縦が難しいMD-80シリーズですが、パイロットさんの熟練の技のおかげもあり、終始安定したフライトでした。最新鋭機材だろうが、ベテラン機材だろうが、結局はパイロットさんの腕なんですよね。
メンフィス国際空港に到着。逆噴射の音が後方から聞こえてきました。外から見ると特徴的な機構のJT8Dの逆噴射。エンジンの一部がパッカンと展開し、エンジン排気部を遮ることで逆噴射します(詳細は検索してください)。逆噴射を終え、通常状態に戻ると音も静かに。
MD-80シリーズのフラップは結構シンプルですね。他機種のように多段式ではなく、板1枚の角度が変化する感じ。
また、スポイラーの小ささも注目。機体サイズの割にはかわいいサイズでした。
CAさんとパイロットさんのご厚意でコックピット見学をさせていただきました。扉を開けるとすぐコックピット。かなり狭かったです。アナログとデジタルが混在するMD-83のコックピットは、今や時代遅れになってしまいました。だが、それがいい。
まぁ、B767もアナログとデジタルが融合したコックピットですし、あまり悪いことも言えません。
個人的にはアナログ計器が好きです。自動車もデジタルのメーターを体験したことがありますが、やはり違和感が。慣れれば問題ないんでしょうけどね。
搭乗機ともおさらば。ベアメタルの銀色塗装。青・白・赤のチートライン。カッコいい...こんな名機が消えてしまうなんて、航空界隈もつまらなくなってしまいましたなぁ。A320やB737が完全退役する数十年後、果たして私は同じ気持ちになれるでしょうか。
メンフィス国際空港内の様子。Fedexの本拠地でもある本空港。旅客は少なめでした。MD-10やMD-11がバンバン離陸する姿を見て、やべー空港だなぁと感じました(褒め言葉)。また来ます。
今回の搭乗機を見送り。逆光なので記録程度に。すらーっとした機体にリアのパワフルなエンジン。ロケットのようなMD-80シリーズも、世界的にレアになってしまいました。ありがとうMD。
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まとめ
そんな訳で、アメリカン航空のMD-83でダラスからメンフィスまでフライトしました。
初搭乗となったMD-83。機内は導入当初のままで、大きなリニューアル改造された形跡がなく、昔ながらの機内を満喫することができました。
JT8Dエンジンの豪快な音の他に、レトロなふかふか布製座席、各種ボタン類、照明など。レトロの詰め合わせなフライトでした。
ここまで感動したフライトは久々。高いお金を払ってアメリカに来た甲斐がありました。
本当に、本当に素晴らしいフライトをありがとうございました。
MD-80シリーズ最高!!!
評価
機内食
★★★★☆(コーラとプレッツェル。コーラは350mL缶の太っ腹サービス)
シート
★★★★★(過去最高ランクの柔らかさ。足元は広さは普通。ふかふかの布製。座面の沈み込みが凄かった)
機材コンディション
★★★★★(機齢19年。搭乗の1ヶ月後に引退。テーブル故障や機内のボロさはあったが、それが逆に素晴らしい!!)
機内スタッフ
★★★★★(親切丁寧テキパキとしたサービス。コックピット見学もさせていただいた)
エンターテイメント
★★★★★(機内誌のみ。JT8Dの爆音エンジン音は最高のエンターテイメント。機窓も大変素晴らしい!!)
時間の正確さ
★★★★★(定刻)
総評
★★★★★
おまけ
シェードに刻まれた「MCDONNELL DOUGLAS」の表記。MDシリーズの特徴の1つ。MD感満点。デルタのMDではリニューアル改装済のためか無地のシェードでした。これを残してくれたアメリカン航空の皆様に感謝。
デルタ航空のMD-88搭乗記はこちら↓↓
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【搭乗記】デルタ航空のMD-88のエンジン真横席は爆音がすごかった!
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