絶滅危惧種の4発機。
B747やA340、A380だけではありません。
世界には小型機でありながら4発のジェットエンジンを装備した変態機種が存在します。
その名もAvro RJシリーズ。イギリスのBAEシステムズ社製。
そんな訳で今回は,Avro RJ85の搭乗記。
この機種に乗るために、ロンドンからアイルランドの首都、ダブリンまでフライトしました。
今回の飛行ルート。
RJ85に乗るためだけに日帰りでロンドンとダブリンを往復した。
搭乗DATA
航空会社:エアリンガス(CityJet運航)
搭乗日:2019/02
路線:ロンドン・シティ⇒ダブリン
飛行時間:1時間25分 (発8:45⇒着10:10)
便名:EI281
座席:1A エコノミー・窓側席
機材:Avro RJ85 (EI-RJI) 機齢19年11ヵ月
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目次
コンパクトなロンドン・シティ空港
ロンドン近郊には6つの主要空港がある。
主に世界の観光客が利用するのがヒースローとガトウィックの2つ。
今回はロンドン市街地からもっとも近い、ロンドン・シティ空港を利用。
極端に例えるなら、ヒースローが成田でシティが羽田といった感じだろうか。
とにかく、シティ空港はテムズ側沿いの街中にある空港である。
ロンドン近郊の主要6空港。シティはロンドン中心部から最も近い。
1500mの滑走路と厳しい騒音規制など、乗り入れできる機材が限られる。
コンパクトなシティ空港。飛行機と待合室の距離が非常に近い。
画像はルクセンブルクのルクスエアのQ400(LX-LQA)。
ちなみに、ルクスエアの子会社はかの貨物大手のカーゴルクス。
ロンドン・シティ空港を発着するRJシリーズ。発着条件が厳しいシティ空港に最適な機材。
1枚目:Jota Aviation(Avro RJ85:G-JOTR:イギリス)
2枚目:WDL Aviation(BAe-146-200:機体番号不明:ドイツ)
どちらもチャーター専門のエアライン。この日は出発を待つ間に2機も収穫できました。
意外と活躍していて少々驚きました。かっこいい。
やはり、市街地に近いシティ空港はチャーター需要にぴったりなのでしょうか。
4発ジェットエンジン装備のRJ85に乗る!!
今回の搭乗機材はイギリス・BAEシステムズ社製のAvro RJ85。
BAEといえば、ミリタリーマニアならご存知の方も多いはず。
初期型のBAe 146の近代化改修型が今回のRJシリーズ。
定員100名以下の小型機でありながら、4発ジェットエンジンを装備。
低騒音と高離着陸性能を目指した設計思想となっている。
1500mの滑走路の短さと中心市街地に近く、騒音規制の厳しいシティ空港に最適な機材。
一昔前では多くのRJシリーズをここで見ることができたとか。
残念ながら、最近はE-Jet・A220・CRJ・DHC-8シリーズにその座を奪われてしまった。
今回の搭乗機材のRJ85(EI-RJI)。4発エンジンが独特なリージョナルジェット機。
エアリンガス塗装前のためか、機体色は真っ白。味気がない。
今回のRJ85はN521XJ→EI-RJIと移籍の経歴がある機体。
最初はアメリカのメサバ航空でノースウエスト便にて活躍。赤の尾翼がカッコいい。
その後はアイルランドのシティジェットでエールフランス便や自社便として活躍。
最後は今回のエアリンガスへのウェットリース機として活躍。活躍しまくり。
残念ながら、現在はシティジェットからは退役。
噂によるとウクライナへ移籍予定だとか。まだ飛ぶのか...
今回は白装束だったが、搭乗直後にエアリンガス塗装になったEI-RJI。
嬉しいことに、搭乗機がGemini200にて1/200のスケールで模型化。即購入した。
最近の模型はクオリティが高いですね。
特にGemini200。このメーカはおすすめです。
4発のハネウェルLF 507エンジンを望む。
1発あたりの推力は31kNと控えめだが、4発装備するため合計124kN。
ライバルのE170/E175は2発で合計122kN。結果として1機の推力は同等。
設計思想としては、
エンジン1発の推力を控えめにして、1機あたりの騒音を小さくしましょう。
といった感じでしょうか。
2発エンジンのE170シリーズもシティ空港に乗り入れている辺り、
エンジン技術の進化で4発化する必要もなくなったのでしょう。
エアラインとしても4発エンジンは整備・運航コストがかかるため、
世界から淘汰される理由もわかります。
B737/A320と同様の3-3配席の太い機内
リージョナルジェットのRJシリーズ。
ライバルのE170・CRJシリーズは2-2配席なのに対し、RJシリーズは3-3配席。
これは小型機のB737・A320シリーズと同様の配置。太い!!
(客室幅・B737:3.53m / RJ85:3.42m)
さすがに通路幅や機内高さはB737・A320より狭かった。
今回の座席は最前列の1A。(出典:エアリンガス HP)
全席エコノミーの92席仕様。4発エンジンの機窓のためにこの席を指定した。
最後部付近の2-3配席も独特。何か理由があるのだろうか。
ずんぐりむっくり感は否めないですね。
今回の座席1A。柔らかい手触りの革製座席。2人掛け席。
機齢20年近い機材だったが、座席はくたびれた感がなかった。
横から。壁の圧迫感はあるが、足元の広さは文句なし。
1時間弱のフライトでは少々もったいないレベルの広さ。
最近のシート薄型化の流れに逆らうかのような、厚い背もたれが良い味出してます。
良くも悪くもふかふかすぎる座り心地
昔ながらのふかふか系の座り心地。
柔らかすぎて逆に疲れてしまった。
薄型軽量化が進み、このような座席が減る今日において逆に貴重な経験となった。
足元広さ。画像のとおり余裕のスペース。最前列座席の特権。
シートポケットの位置が足先に対してズレている点が気になった。
座り心地レビュー
ホールド感ややあり。拳3個分の足元間隔。座席幅は普通。柔らかすぎて逆に疲れる。革製座席。もう少し固めでもいいかもしれない。過去最高クラスの柔らかさ。
座席の柔らかさ
★★★★★
リージョナルジェットだが十分な機内装備
リージョナルジェット機だが、機内の装備は妥協することなく備わっている。
座席上部の読書灯・シートベルトサイン・個別空調など。
荷物棚の収納スペースも問題なし。
さすがにキャリーバッグは入らないが、普通に使う分には困らない。
読書灯・個別空調・シートベルトサイン・CAさん呼び出しボタン類。
レトロなオレンジ色のベルトサイン類。
機齢20年弱。時代を感じた。
荷物棚の収納スペース。ライバルのE170シリーズと同等の収納力。
筆者のバッグも問題なく収納出来た。
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プロペラ機並みの素晴らしい加速力
4発ジェットのRJ85。素晴らしい加速でロンドン・シティ空港を飛び立った。
加速力はプロペラ機のSAAB340BやQ400と同等。
背もたれに吸いつけられる感じといったら大袈裟だが、
明らかに他機種のジェット機よりも素晴らしい離陸滑走だった。
加速力の素晴らしさは巡航時も素晴らしかった。
背もたれに感じる加速と減速の力強さ。
大型機ではなかなか感じることの出来ない乗り心地を体験できた。
右側視点。高翼構造&4発エンジンの変態コラボ。
競合機にAn-148がいるが、こちらは2発機のため面白さがない。
軍用機だと日本のC-1やC-2も同じ。
是非ともMD-80シリーズと同系列のエンジンを装備するC-1に乗ってみたいものだ。
シティ空港のスポット。
Q400やSAAB340、E170シリーズなどの小型機が目立つ。
背もたれに感じる素晴らしい加速力でシティ空港を離陸。
この加速力、プロペラ機レベル。ジェット機でこの加速は素晴らしい。
エンジン音も素晴らしく、MD-90やA320/A321のV2500に似た音。
4発機だが爆音ではなく、エンジン1発あたりの騒音が抑えられている感じだった。
さすが、騒音対策を狙った機体である。
飛行機界のCIVIC TYPE Rですね!!!
カップが独特な新感覚コーヒーをいただく
せっかくなのでエアリンガスの機内販売を楽しむことに。
基本的にサービスは有料。今回は3ユーロで珈琲を注文した。
コーヒーの提供方法が独特だった。
カップ内部に粉末のコーヒー豆とお湯が入っているスタイル。
飲み口部に網があり、そこで粉末の豆が濾過される。
このコーヒーの提供方法は初体験だった。
ホットコーヒーを注文。お値段3ユーロ。
イギリスはポンドだがアイルランドはユーロ。
複雑なお国事情を機内で体感した。
カップ内に粉末コーヒー豆とお湯が入っていた。口元の網でドリップ。
苦さ控えめ。風味良し。美味しい。なぜか、わずかにざらざら感が残っていた。
濾過不足だろうか(笑)。
このスタイルのコーヒーは人生初体験でした。
シートポケット収納物一覧。
機内誌はエアリンガスだが、安全のしおりはCityJetのもの。
便名はエアリンガスだが、運航はCityJetだった。CityJetのウェットリースによるもの。
RJ85ならではのフライト
力強い離陸の次は水平飛行へ。1時間弱のフライト。盛大に満喫した。
まずは機窓。やはり、4発機の機窓は絵になる。
この機窓のために1Aを選んだ甲斐があった。
次はシェード。驚きの上下分離式。
完全に閉めるためには上と下の2つを操作する必要がある。
これは初体験。RJシリーズ唯一の体験。
最後にトイレ。絶滅危惧種な循環式。
これはRJシリーズならではとは言えないが、昔の機材あるある。
ベテラン機材のレトロさを体験することができた。
高翼構造 & 4発エンジンの機窓
青空と2発のエンジン。さらに高翼構造。
B747・A340・A380では眺めることのできない機窓。
やはり、独特な機材でのフライトは気分が高揚しますね。
高揚...飛行機だけに。RJ85大好き。
上下分離式のシェード
上下分離式のシェード。Avro RJシリーズの特徴。
どういった設計思想でこうなったのかは不明。非常におもしろい。
下だけ閉めたVer & 上だけ閉めたVer.
上だけ閉めることはあっても、下だけ閉める時はあるのだろうか??
循環式のトイレ
昔ながらの循環式トイレ。水色の循環液が流れた。
若干においが気になったが、レトロ成分を補給できたため文句なし。
緑の国、アイルランドへ
アイルランドは緑の国。
エアリンガスの塗装を始め、パスポートスタンプの色、バス、郵便ポストなど。
シャムロック(三つ葉のクローバー)はアイルランドの国章に制定されており、
それらはアイルランドの大地を緑に染めている。
詳細な説明は省くが、アイルランドは緑色が美しい国ということ。
ダブリン国際空港へファイナルアプローチ。
アイルランドの色である緑色の大地が眼下に広がっていた。
ダブリン郊外。日帰りアイルランド遠征の幕開け。
無事、入国できるだろうか??心配しかなかった。
ダブリン国際空港に到着。CityJetのSSJ100が駐機していた。
残念ながら、SSJは退役してしまったようだ。まだ新しいのに...
ロシア機がEU内を飛ぶのは何とも違和感がありますね。
一応、安全基準はクリアしてるので飛べるんでしょうけど。
4発のLF507エンジンともおさらば。
余談だが、これは最近主流になりつつあるギヤードターボファンエンジン。
PW1000Gシリーズがデビューする前からこの機構が採用されていたとは。
ハネウェルさん、やりますねぇ。
無事、アイルランドに入国完了。入国審査で突っ込まれたが(笑)
先述した緑色のスタンプがアイルランドらしさ満点。
入国審査官
「滞在1日なの??」「どこ行くの??」
「ギネスビールの博物館までは遠いから気をつけてね」
「滞在できても5時間しかないじゃん(笑)」
「出発の2時間前までには戻ってきなよ」
「早くいきなさい!!!Go!!!」
気さくな入国審査官にいろいろと心配されながらも、無事入国できました(笑)
入国からアイルランドにいい印象を持ちましたね。
優しいお姉さん、また会いに行きます!!!今度は泊りで。
空港を去り、ギネス・ストアハウスに直行。アイルランド名物ギネスビールをいただいた。
アイルランド、次回はじっくり訪問したい。日帰りでは勿体ない。
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まとめ
そんな訳で、Avro RJ85でロンドンからからダブリンまでフライトしました。
4発エンジン装備のリージョナルジェット機のRJ85ですが、
撮っても乗ってもおもしろい、素晴らしい機材でした。
4発エンジンに高翼構造の独特なスタイル。
素晴らしい加速力。まるでプロペラ機レベル。
そしてサービス。
カップの飲み口でドリップする新感覚のコーヒー。
美味しく、新体験でした。
最後にアイルランド。
緑の国というだけあって、いたるところに緑成分が。
日帰りでは勿体ないです。是非、泊りでじっくりと訪れたい国ですね。
絶滅危惧種なAvro RJシリーズでのフライト、大変素晴らしいものでした。
世界的に退役が進む本機材。残念ながら、CityJetからも退役が進んでいます。
乗れるものは乗れるうちに。また乗りに行きたいです。
評価
機内食
★★★★☆(口元でドリップする新感覚コーヒー。おもしろく、美味しい)
シート
★★★☆☆(最前列のため足元は広い。しかし、座り心地が柔らかすぎて逆に疲れた)
機材コンディション
★★★★☆(機齢20年。若干のくたびれた感はあったが飛行は問題なし)
機内スタッフ
★★★★☆(気さくなCAさん。テキパキとサービスしていた)
エンターテイメント
★★★★★(機内誌のみ。しかし、4発エンジンの機窓は大変素晴らしかったため5つ星)
時間の正確さ
★★★★★(10分の早着)
総評
★★★★★
おまけ
ダブリン国際空港周辺にて。サークルKのガソリンスタンド。
日本ではコンビニで有名なサークルKですが、海外ではガソスタもやってるんですね。